とろとろと眠っていて、白哉はふと目を覚ました。 半ば夢を見ている頭で、身体が重い、とぼ んやり思う。悪い夢をみた後のように、咽が、ひどく渇いていた。枕許の水差に手を伸ばそうと上体を起した、その時。白哉 は初めて、近くに人の気配があることに気がついた。 薄暗闇の中目を凝らせば、だんだん とその輪郭が浮かび上がる。戸口に眠るその人の顔を見て、白哉は嗚呼、と小さく呻 いた。そして同時に思い出す。痛み、焦燥、戦慄、安堵。黒崎一護との戦いのこと、藍染の裏切りのこと、ルキアを 庇って倒れたこと、緋真との約束のこと。 (、だったか) この暗がりの中でも、彼女の目許が赤く腫れているのは容易に見て取ることができた。日に日に弱る 緋真を見て、病に身体を侵される浮竹を見て、彼女が泣いていたことを自分は知っていた 筈なのに。とうとう自分まで彼女に心配をかけたのだと思うと、それだけで申し訳なかっ た。 朝になったら、謝らなくては。 咽の渇きは、不思議と気にならなくなっていた。ほう、とひとつ息を吐いて、白哉は再び横になる。液状のまどろみに身体を委ねて、深く、深く、おちてゆく。 翌朝、白哉が目を覚ますと、は既に起きていた。夜にいたのと同じ位置で、開 いた戸から外を見ている。 「 掠れた声で白哉が呼ぶと、弾かれたように振り返った。おはよう、と微笑して、黒曜の瞳 をわずかに細める。目許の腫れは、もうだいぶ引いていた。 「ずっと、付いていたのか」 「ルキアちゃんもね、結構、遅くまで」 「そう、か」 「大切に思うのなら、泣かせてはいけないよ」 言って、は困ったように微笑う。も、ルキアも、ただ泣かせたのではない、傷つ けてしまったのだと思った。ふたりとも、誰よりも大切にしたかったのに。 「私はを、困らせてばかりいる」 「いいんだよ、後輩は少し手が掛かるくらいで」 「……」 「…あの子たちが来たらきっと起してあげる。だから、」 だから、もう少し。もう少しだけ眠っていなさい。白磁の手がつと伸びて、白哉の髪を優しく梳いた。 「、すまないが…手を」 「繋ぐの? 痛みなど何処にもない、眠気など残っていない。それでも貴女がそう言うのなら、もう少しだけ。 (060809)未完 |